年忘れ映画大会

 

9月末から身辺でいろいろな出来事が起き、大好きな秋が駆け足で通り過ぎていった。
師走の声を聞くと、それだけでもう気ぜわしくなる。
だからというわけではないが、勝手にいち早く忘年会の代わりに一日好きなことをすることにした。
それで、映画の梯子。
しかも、久しぶりに3本立て。
観たい作品をチェックしていたら6本もあって、それが全て広島バルト11で上映しているというラッキーも手伝って、スケジュールを組むのに四苦八苦した。
しかしこれは、嬉しい悲鳴です。
結局、かなり前評判が良く気になっていた、私には珍しい選択となった(ホラー映画「スペル」)。

観た友だちに、「絶対に映画館で観てね! すごく感動するから!」と強く推された「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」。
どうしても早く観たかった韓国映画「母なる証明」。

最初の「スペル」原題は「Drag Me To Hell」で、こっちの方が迫力ある。
ちなみに「スペル」は呪文の意味で、銀行で働くキャリアウーマンのクリスティンが融資を断ったばっかりに老婆に呪いをかけられるという話。
しかし、このクリスティンはそんじょそこらのやわな女の子ではない。
彼女は自分の幸せのために必死で老婆に、呪いに立ち向かう。
ホラー映画は映画館で観ると、周りが暗いので、それだけですでに怖い。
静寂のあとの大音響効果や、来るぞとわかっていてもその心の準備が既に恐怖心を煽る。
怖いが笑えるシーンも満載で、怖いのに可笑しい、可笑しいけど怖い。
この不思議な気持ちが次から次へと流れのように押し寄せる。
ラストは鳥肌もので、しばらくは席を立てなかった。
ホラー映画なのに、なんだかすごいエネルギーを感じたのは、作り手、サム・ライミ監督の映画に対する情熱が伝わったからなのか。

二本目「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は、特にマイケルのファンでなくても十分満足できるコンサートリハーサルのドキュメンタリー映画だ。
観ながら、そのクオリティの高さに、果たしてこれはリハーサルなのかと驚愕する。
彼は、愛が溢れる、感謝を忘れない、謙虚なキング・オブ・ポップだったということが、痛いほど、悲しいほどスクリーンから伝わってくる。
楽曲は、昔からの聴きなれたものなのに、それぞれが一つの芸術品のような仕上がりになっていて、映像・ダンス・演奏、関わる人全てが、マイケルを心から尊敬し、愛してやまないということを実感できる素晴らしい映画だ。

そして三本目の「母なる証明」は前評判の良さから想像していたものを、はるかに超えた完璧な映画だった。
人間の感情の複雑さ、親子の愛情の複雑さ、社会環境の複雑さ、いろいろな要素が絡み合って混ざり合っているのだが、きちんと整理されていてわかりやすく、映画の世界に入っていける。
映画の醍醐味は、その中の誰かに感情移入出来ることで、国が違っても性別が違っても、たやすくなれることがある。
時には複数の登場人物に自分を置き換える。
自分の意思でなるというより、観ている間にいつの間にかそうなってしまう。
観ている間に、私は愚かで愛情深い母親であり、純真無垢な息子であり、殺された少女だったりした。
そして、静かに映画は終わり、充実感が体の底から湧いてきた。

三本とも全力で観切って、帰宅後はしばらく脱力感に襲われた。
帰宅すると、そこは現実、自分に自分をあらためて置き換える。
思えば、今年ほど映画を観た年もなかったと思う。
東京・福山・尾道・広島と観たい映画があれば、許す限り観た。
試写会も何回か行ったし、友だちと、家族と、一人でも観にいった。
DVDもテレビでも、貪るように観た。
それがどこかで、血となり肉となっているはずだと信じて観続けた。
そんな一年の終わりにふさわしいというか、今年を象徴するような一日だったと思う。