たからもの

30年来の友だちが、母の米寿のお祝いを兼ねて神奈川から遊びに来てくれた。
10歳年上の彼女とは、結婚して最初に就いた職場で知り合った。
通勤ラッシュが苦手で、朝早く出勤する私によくおにぎりを作ってきてくれた彼女。
一緒に仕事していた期間は1年くらいだったと思う。
それから、4年くらいは時々私が会いに行った。
彼女はその当時、電車に乗れなかったから。
私が広島に移ってからは、年に一度くらいしか会えなくなったけど、なんだかそれからのほうが近くになった気がする。
まだアパート暮らしの頃は、私が泊まりに行くと、布団を三つ敷いて川の字になって寝た。
旦那さん・彼女・私。
夜通し睡魔と闘いながら、泣いたり笑ったり、怒られたり励まされたり。
その間大きなこともたくさんあった。
私の舅と父が亡くなり、彼女の両親が亡くなり、彼女は大きな病気を3つして、4つの手術も経験した。
私は、何か新しいことがあるたびに彼女に報告して、ハラハラさせて心配かけたり、協力してもらったり、母親のような姉のような、そんな友だち。
「数字を覚えるのが苦手」と言って、いつも過ぎてから「誕生日おめでとう!」と言い訳する私。
彼女は私だけではなく、家族の誕生日に電話でお祝いの言葉をくれ、母の誕生日前には必ずプレゼントも届く。
「遠くの親戚より近くの他人」というけれど、「近くの親戚より遠くの他人」だ。

来三のたびに、小さな旅をする。
三原・尾道・竹原・鞆の浦、今回は、彼女が前から気になっていたという大三島、大山祇神社を訪れた。
待っていてくれたような名残の桜がところどころに観られる柔らかい日差しの穏やかな春日。
今月14日に奉祝祭を終え落成したばかりの、688年ぶりに再建された総檜造りの総門が出迎えてくれる。

大山祇神社(おおやまずみじんじゃ)は、瀬戸内海の大三島に位置する神社。所在地は愛媛県今治市大三島町宮浦。大山積神を祭神とし、全国の山祇神社、三島神社の総本社である。国宝8件、国の重要文化財75件(2008年現在)を有し、天然記念物「大山祇神社のクスノキ群」がある。 皇室からも厚く信奉されており、境内には昭和天皇の研究を展示した海事博物館が併設されている。(ウィキペディアより)

ここの楠は半端じゃなくパワーを感じる。
お約束の手かざしでたっぷり楠パワーをいただいて、神殿へ向かう。
神妙な面持ちで手を合わせた後、彼女がおみくじを何十年かぶりに引いた。
「前半はいろいろな苦労があったが、後半の人生は平穏に過ごせるので、ゆったり暮らす」
そういう内容のことが丁寧に書いてあった。
彼女は今、このタイミングでここを訪れ、この啓示を聞き、感無量の面持ちで、自分の今までの道程を噛みしめる。
もともと小柄なのに、何回もの手術を経てますます小さくなった。
それでも、表情はだんだん穏和に柔らかく若返っているように思う。

一生に何人大切な人に会えるだろうか。
宝物のようにずっと持っていたいと思い続ける人に。
時々でいいから、寄り添っていたいと思える人に。
それを持っている私は、とっても幸せで、彼女もそう思っていてくれている。
ずっと前から。