ナンモナイ

今年の夏がなかなか終わらない。
残暑が厳しい年は今までにも何度か記憶しているが、発表会の練習みたいに毎日大合唱していた蝉たちが静かになり、夜は秋の虫が静かに鳴きはじめ、なんだかんだ言っても、秋の足音はそれなりにしていたはずなのに・・・。
例年は、お盆が過ぎるとそこらじゅうで秋の気配を感じていた。
何より、空気そのもので、秋がもうすぐやってくることを知らせてくれるのに。
今年に限っては、お盆過ぎから連日35度を超える真夏日が続いている。
そんな長い夏に、来年の蝉まで慌てて起き出したのか、今朝は9時までのわずか1時間のあいだに、蝉のカルテットが楽しそうに鳴いていた。
夜は夜で早とちりに気がついたのか、虫の声までしなくなり、とうとう夜通し冷房をつける日が続いた。
後にも先にも、こんな贅沢は初めてだ。
そんな中で、元気だったのが、庭の白い百日紅(さるすべり)。
珍しく7月に大輪が一枝、重そうに揺れていた。
今年は出来が悪いのかという心配をよそに、次から次に咲き出して、今がピークを迎えている。
風がない日でも、その重さでゆらゆらと気持ち良さそうに揺れている。
色彩の少ない夏の貴重な花だから、健気で愛おしく、白いその姿は優雅で涼しげだ。
「暑いですねぇ」が挨拶代りの毎日でも、着実に秋の気配を感じるのが、洗濯干し場に陽が射すのが遅くなってきたこと。
太陽の角度だけは決してだまさない。
これから、短い秋を経てまた陽の当らない長い冬の到来をがっかりするほど予感できる。
真っ青な空に浮かぶ雲も、だんだんと横長になってきた。
空気はまだでも空の風景は、着実に秋なのだろう。

今年の夏は、山登りも小旅行もしないで、映画と読書に明け暮れた。
二度目の富士登山か、九州の山に初挑戦するという淡い思いも、計画さえしてもらえず、自然消滅した。
近くの山さえ登ろうという気にもなれなかった。
ちょうど車検と新車納入がズレて、この夏中 代車で過ごしたせいもある。
インドアライフも甚だしかった。
こんな夏もあるだろうけど、過去よりも未来のほうが短い気がして、過ぎてしまうともったいないことをしたと、少し後悔する。
映画や本の話しだったら、いくらでもできるのに・・・。
夏は田舎暮らしの身には人待ちの季節でもある。
今年は見事に来客もなく、ひっそりと家族だけで過ごした。
半端なく何も訪れなかった夏。
そういう意味では稀で、逆に印象に残る夏だったのかもしれない。
そんな夏の総括を自分なりにしていたら、いつの間にか蝉の独唱が始まった。