麺人類

馬肥ゆる秋真っただ中。
あれだけ長かった夏が最後になってそそくさと去っていって、それでもさほど衰えなかった食欲に、火がつく。
この季節、果物、野菜(特に穀類)、魚(なんと言っても秋刀魚(さんま)、キノコ類(松茸じゃなくっても!)、そして待望の新米と周りには美味しいものだらけになる。
9月の末に一つ年が増える私の誕生日の御馳走は、大好きな茶碗蒸しと栗ご飯が定番だった。
自分が中心になって作るとなると、誕生日に嬉しいのは外食、リクエストがあってもなんとなく「特別なことなんてしなくたって」ということになる。
オネダリベタなのである。
私の料理が上手かどうか、(もしくは好きか嫌いか)は別にして、我が家の食卓には実に麺類が多く出る。
これは、夫がかなりの麺好きだからだ。
麺なら何でも好きなので、「蕎麦でなけりゃあ!」とか「スパゲッティはアルデンテやろ」とかは言わない。
ただ、朝の身支度の最中に「今日はざる蕎麦だな」とか「あー、ミートソース食いてえ」と、突然言い出す。
その夜にはよっぽどのことがない限り、リクエストメニューが出るのだから、彼はそういう意味では果報者である。
却下されるのは、昨日が素麺、今日が饂飩と続く時くらいで、私自身も麺類は好きなので献立で頭を悩ませることもなく決定される。
特に、一番好きなのは蕎麦だ。
でも、家庭で美味しく食べるのが最も難しいのがこの蕎麦でもある。
蕎麦のために天麩羅も揚げたりするし、山芋や大根おろしにきのこを添えたりもする。
奮発して、少し高い麺つゆを買うこともある。
しかし、主役の蕎麦だけは打ち立てが圧倒的に美味しい。
しかも茹でて水洗いする時の水の冷たさも重要なポイントになるので、生ぬるい水しか出ない家庭で作る夏の蕎麦はあまり美味しいとは言えない。
退職して悠々自適に仲良く役割分担を決めている知り合いの御夫婦は、週に3日の御主人の食事当番の日には決まって麺らしい。
しかも、蕎麦は手打ちという拘りよう。
当番制も含めて、理想の老後のかたちである。
スパゲティも、今では最低でも2種類のソースを用意する。
ナポリタンと明太子。
ミートソースとキノコソース。
最近は、ミート缶は使わないでソースもほとんど手作りする。
だんだん自分で作るものが美味しくなってきたのだ。(使用する鍋や美味しいトマトケチャップのおかげでもある)
もちろん、ラーメンも大好きだ。
ラーメンに関しては外食が多い(インスタントラーメント食事ではなく副食ですから)。時々頂き物で、全国の美味しいラーメンを頂くと、準備万端でラーメン屋さん並のスピードで作る。
ラーメンだけは、温かい器と茹で時間が命だ。
たとえインスタントラーメンであっても、それは変わらない。
何を食べても、そううるさく言わない夫が、伸びた麺だけは異常に反応する。
麺よりご飯が大好きだった母も、いつの間にか麺好きになってくれて、昼食にご飯があっても「今日はラーメンに卵入れて食べちゃった」ということもある。
麺が食卓にあがる日は、やたらと機嫌が良く、食器を下げるのを手伝ってくれたりする。
夏は、素麺が圧倒的に多いが、冷やし中華風にしたり、数種類の薬味を乗せて和風のぶっかけにしたり、工夫も怠らない。
カレーの翌日はカレー饂飩も定番!
我が家はもはや麺人類。
ますます肥ゆる秋に要注意!!