下戸の超然

私の父はお酒に飲まれる人で、仕事で一匹狼を自負していたこともあって、誰と どこで飲んでも、〆は一人ではしご酒。
お酒にまつわる失敗は数知れず、私も相当に迷惑を被った。
本人はいたって善人で、ただ振りがつくとどうも止まらなくなり、父の中に知ら ない人格がその時だけ現れてくるような感じだった。
母の苦労をずっと見て育っていたので、結婚するなら絶対に「下戸!」と決めて いた。
そして、それを貫いた。
おかげで、お酒にまつわる心配ごとは一切経験したことがなく、忘年会で夜遅く 迎えに行くのは確かにめんどくさくもあるけれど、市役所の川べりに佇んで待っ ている姿を見ると、飲酒運転の心配もなく、マジメでよかった、とつくづく安心 する。
そんな私たちが、招待されて今年、「ボジョレ・ヌーボーを楽しむ会」を経験し た。
ワインより、オードブルに惹かれたことも否めないが、未体験ゾーンに足を踏み 入れることについては(もちろん誘われたこともなかったし)不安よりも期待が 大きかった。
会場は国際ホテルの大広間、席もちゃんと用意されていて、エレクトーンの生演 奏までついている豪華なものだった。
有識者による乾杯の音頭と共に、生まれて初めて解禁日にワインを沢山の人と飲 む。
赤とロゼの中間くらいの綺麗な色のワインはほんのり甘く、酸味もほどほどで、 口当たりも優しく、下戸でも美味しいと思える。

2杯目は、少し濃い赤だったが、これがフルーティで美味しい。
味なんてわかると思わなかったのに、違いがわかったことに少し感動。
「おいしいですねっ」と言うと、「こっちのほうが高いんですよ」と同席者が教 えてくれた。
隣では、私より下戸の筈の人が真っ赤な顔をして何杯目かのワインにご機嫌で、 軽口を誰彼となく叩いている。
いい加減に気持ち良くなっている自分がわかる。
失言も気にすることなく、楽しい雰囲気の中、オードブルの分配も気にしながら 楽しい時は流れた。
会場にいる200人以上の人が、友人や仲間、久しぶりに会った人たちとの会話を楽 しみながらワインを堪能している。
この場に自分がいることが不思議なのだが、特に違和感はなく、「あれ?なんか 楽しくない?」と、自問自答する。
実は、お酒が好きで強い友だちも何人かいて、一緒に食事すると、必ず美味しそ うにビールを飲んだりするのが(ランチタイムも時々)羨ましかった。
飲めると飲めないじゃあ、人生の楽しみ方が違うということはわかっていた。 わかっていても、それを認めると自ら選んだ下戸人生を否定するような気がして 、お酒の楽しさをどこかで封印していたような気がする。
ボジョレ・ヌーボーの解禁と共に、そんな頑なさも帰りの沼田川に捨ててしまお う。
そんな浮かれた気分にさえなった。
今年のクリスマスは、おしゃれにワインとオードブルにしてみようかな。
炭酸好きの我らにはスパーリクリングワインなんてどうでしょう?
ワインに合うオードブル(すぐに浮かぶのはバジルソースのカルパッチョ)も作 ってみよう!
いい気分にかこつけて、普段言えないようなことも言ってしまおう。

☆★貴重な機会を下さった、このサイトも覗いてくださっているOさんと、当日、 何もわからない私たちの面倒を甲斐甲斐しく見てくださった美しい娘さんに、こ の場を借りて心から感謝します。 ありがとうございました。よいお年を。