朝ドラ再び・・・

「恐縮ですが・・・」と、もう亡くなってしまったがどこか憎めなかったリポーターの口癖を敢えて使わせてもらおう。
そう、起きるのが楽しみになっている朝ドラの話。


「ひまわり」で毎朝爽やかな気持ちにしてくれたNHKの朝の連続テレビ小説、満を持して私の大好きな脚本家、渡辺あやさんの「カーネーション」が、泣いたり笑ったりの一日のスタートのホイッスルを吹いてくれている。
渡辺あやさんは、島根県在住の主婦である脚本家。
デビューは映画「ジョゼと虎と魚たち」(2003年)で、二年に一作品のペースで秀作を世に送り出している。
「ジョゼと虎と魚たち」の原作は田辺聖子氏の短編だったが、田辺氏には失礼ながらそのクオリティは原作をはるかに超えて、主演の妻夫木君はこの作品を機に演技派のイケメン俳優として一気にメジャーになった。
2作目の「メゾン・ド・ヒミコ」も、前作と同様に犬童一心監督とコンビを組み、ゲイのための老人ホームを舞台に、父と娘の関係やそこで暮らすゲイたちの生き方というシリアスな内容を、ユーモアとペーソスに溢れる描き方をして、高い評価を得た。
2007年には、くらもちふさこの人気漫画「天然コケッコー」を見事に2時間弱に集約してみせた。(監督は、これまた大好きな山下敦弘)
この3作品に共通して言えることは、出てくる人たちが皆、実に生き生きと、丁寧に描かれていることだ。
監督の手腕に寄るところもあるだろうが、台詞や動作の一つ一つがそれぞれの個性に合っていて、しっくりと腑に落ちる。
その後も、日韓合作映画の「ノーボーイズ・ノークライ」TVドラマ「火の魚」「その街のこども」など、どれも好きな作品ばかりで、今のところ外れは一つもないという私にとっては、特別な脚本家だ。
そして、「カーネーション」。
世界的なファッションデザイナーのコシノ三姉妹(ヒロコ・ジュンコ・ミチコ)の母であり、自らもデザイナーとして、洋服職人として活躍し、2006年に92歳で亡くなった小篠綾子さんの生涯を描いている。
主人公糸子(綾子さん)の、情にもろくまっすぐな男前な性格に元気づけられ、お母さんのお嬢様育ちならではのおっとりとした性格に癒され、人の弱さや強さや、いい加減さや生真面目さという、両極にあるものすべてをちゃんと受け入れてくれる。
と、ここでふと不思議に思うのだけど、朝ドラほど脚本家にスポットが浴びるものはない。
それはたぶん半年という長期間、毎朝、BSを含めると一日に4回放送される露出度といい、脚本家冥利に尽きる。
それでいて、繰り返し放送されるという点において荒も目立ってしまうという怖さもある。
しかし、我らが渡辺あやさんは、堂々とその大役を十二分にこなし、一人の女性の一代記に留まらず、その時代に生きる強者・弱者を丁寧に描き、毎朝「うーん、上手い!」と唸らせてくれるのだ。
脚本は、観る人に文学的面白さと映像的な面白さを同時にイメージさせる事が必要で、その二つを満たすことは容易ではないと思う。
一つの台詞がせっかくの場面を台無しにしてしまう可能性もある。
今まで、何度もそういう場面に遭遇して、朝ドラに背を向けた事があった。
今のところ「カーネーション」で、渡辺あやさんは、その大きすぎる期待を裏切ることなく、ますます面白くなって楽しませてくれている。
週ごとに付けられるサブタイトルはなんと「花言葉」になっている。
第1週「あこがれ」はひまわり。
第16週(今週)「揺れる心」はホテイアオイ。
こんなところにも実に女性らしい細かい配慮が心憎い。
善戦しているとはいえ平均19%という視聴率、もっと上ってもいいと思うのは私だけでしょうか?