私的文化の日

恒例の冬の家族旅行。
去年は、鳥取温泉のちょっといい宿に泊まる目的の山陰小旅行、雪のちらつく中、かまぼこで有名な静かな港町仙崎を訪ね、金子みすゞ記念館で薄幸のみすゞさんの人生に涙し、素朴で美しい詩に感動し、境港の水木しげるロードを呑気にぶらぶらして、帰りは大吹雪の高速を怖々南下した。
今年は、灯台下暗し、意外と連れて行っていなかった隣県岡山の名所を巡る旅を企画した。
初日、余裕の9時前に出発、天気は曇り、高速に乗って1時間ほどで最初の目的地である備前国一宮「吉備津彦神社」に到着。
2月の神社は本当に静かです。
吉備津彦神社は夏至の日に太陽を真正面から迎えるように建てられていて、神話の国岡山らしく、自然崇拝の名残がそこかしこにある。
正面からみるとお堀があって、参道を通り、拝殿、渡殿、本殿と続く。
奥には杜(森)があり、神社独特の静かな気持ちのいい空気感がある。
車で10分ほど走ると、備中国一宮「吉備津神社」がある。
本殿・拝殿は国宝、南北の門と占いで有名な御釜殿は重要文化財になっている。
本殿にお参りした後、風情のある回廊を歩いて、御釜殿に向かう。
以前訪れた時も、説明を聞いた記憶があるが、占ってはもらなかった。
薄暗い部屋にあがると誰もおらず、懐かしく周りをみていたら、奥から阿曽女(あぞめ)と言われる女性が出てきて親切に説明をしてくれた。
願い事を書いたお札を御釜の周りに並べ、神官が祝詞をあげ、阿曽女が御釜の上で蒸しているセイロの中に玄米を振ると、願い事がかなうならば唸るような音が鳴り響くのだ。
団体でそれをすると、不思議なことに叶わないと出る札の前ではその音がピタッと止まると言う。
やってみたいようなみたくないような、結局2回目の私たちは今回もする勇気がなく、不思議感を背負って、その場を後にした。
結構歩いたので、倉敷のイオンモールで焼き立てパンとジュージューに焼けた鉄板のハンバーグの昼食の美味しかったこと!(しかもリーゾナブル!)
3時前に今夜の宿泊先である国民宿舎「サンロード吉備路」に到着。
隣接する鶴の里で置物の様にじっとしている丹頂鶴を見に行き、温泉でくつろぎ、ひと休みして夕食。
本当に極楽気分です。
二日目は、雪舟が涙で鼠の絵を描いたと言われる宝福寺と、荘厳な五重塔のある国分寺を見学後、倉敷の美観地区へ。
大原美術館をゆっくり見て回った。
改めてこの美術館を回ると、世界の名画がコンパクトに飾られていることに新鮮な驚きがあった。
モネの「睡蓮」ドガ「3人の踊り子」ゴーギャン「かぐわしき大地」をはじめとして、誰でも知っているルソー、ゴーギャン、ピカソ、モジリアーニ、セザンヌ等の世界の巨匠たちの作品が普段着のように掛かっている。
その中で唯一よそいきの雰囲気の中に鎮座しているのが、私が一番好きなエル・グレコ「受胎告知」だ。
この約400年前に描かれた世界的名画が日本にしかも岡山の倉敷という小都市の小さな美術館にあることは、美術界の奇跡とまで言われていて、この絵を見にこの地を訪れる愛好家も少なくない。
色の美しさ、表情の優しさ、この絵の前では誰もが(その値段の高さも想像すると)溜息を洩らす。
改めてこの美観地区を歩いてみると、なるほど倉敷は、この場所だけでも自慢出来るいい街だと思う。
なによりもバランスがいい。
小さな川に風にそよぐ柳、白壁の並ぶ店の佇まいは騒々しさがない。
道行く旅行者も、時間に追われている感じがしないのは、たんなる冬の平日という限定だったのか、否、何度も訪れている印象がやはりそうなのだから、観光地と一言で片づけられない魅力があるような気がする。
恒例の冬旅もお天気に恵まれて無事終わった。
近くだったにもかかわらず、いつまでも気持ちのいい余韻の残る旅だったと思う。