坂本龍一 MIHARA  音楽の学校
〜オーケストラと市民の誕生〜(スコラ特別編)

初めてのクラッシックコンサート体験は、NHK、Eテレの「坂本龍一schola 音楽の学校」の特別編。
知らなかったけど、NHK中継車も来ていて、開演前「このコンサートの模様はNHKで放映されることをあらかじめご理解ください」とアナウンスが流れた。
端っことはいえ、前から4番目という位置に少し緊張が走る。(映らないだろうけど!)
開演前、開放的なステージ上で、何人かの楽団員が楽器のチューニングをしている。
何人編成のオーケストラなのだろう、ステージにはめいっぱいの椅子が所狭しと並べられている。
開演時間になると、そこで練習をするみたいに、楽器を持った楽団員がぞろぞろと現れる。
広島市出身の指揮者、松浦氏と福山市出身の藤井美雪さん(アルト)が登場すると、期待の拍手が波のように起きる。
まずは、音楽の父と言われている、コハン・セバスチャン・バッハ(1685〜1750)の「マタイ受難曲より(憐れみたまえ わが神よ)。
落ち着いた美しいアルトに聴きほれ、バイオリンの上品な音色に鳥肌がたつ。
『うーん、これがバッハなのね…』
わからないなりに、『すごい!』という曖昧な感覚は音好きなら味わえるはず、そう思って新しい分野に足を踏み入れたわけだけど、やっぱりすごい!!
曲が終わると、再び割れんばかりの拍手、その中を本日の主役、坂本龍一氏と進行役の小沼純一(文化人で大学教授)が登場。

曲の紹介や、今回のテーマであるオーケストラの楽しみ方等について、友だち同士の雑談のような気軽さで会話が弾む。
それぞれの楽器で違う音譜が演奏され、その合体が一つのオーケストラとしての完成形になる。
そんな楽しみ方があると言う坂本氏の話に頷きはするが、耳をすませて、パーツごとに聴いてみるという高度な技術はまだ持ち合わせていないことが、少し残念。
2曲目は、ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)交響曲第3番「英雄」
この曲からオーケストラの人数は倍に増える。
(初めて聴いた)エクトル・ベルリオーズ(1803〜1869)の幻想交響曲、ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)と続く。
バッハ・ベートーヴェン・ブラームスとドイツ三大Bの偉大な作曲家の曲が並べられると、クラッシックはドイツから発信され、その影響を受けた多くの芸術家たちが、ヨーロッパを中心として各地に散らばっていった歴史を感じる。
ここで、20分の休憩が入り、生のオーケストラを同じ檀上で聴く幸運な、40人の特別聴講生の席が用意された。
この聴講生はチケット購入時についていた応募券に質問内容を書き込んで応募した選ばれた人たちで、一緒にチケットを買ったSちゃんも一番前の席で楽しそうに座っていた。
坂本氏は目と鼻の先。
後から聴いたら、楽器の振動が直接感じられ、至福の時間だったとのこと。
「積極性は幸運をもたらす!」「好奇心は宝箱を開くようなもの」その通りだね!
後半部は、事前に寄せられた質問に答えながら、クロード・ドビュッシー(1862〜1918)、イゴール・ストラヴィンスキー(1882〜1971)、テリー・ライリー(1935〜)と現代に近づくにつれ、逆に耳慣れた音楽から逆行する気もしたが、坂本氏の熱演ピアノ参加もあって(ずっと同じタッチで弾き続ける、腱鞘炎必至の曲)それなりに楽しめた。
クラッシックという言葉の意味からすると、古典を思うが、実は、西洋の芸術音楽を指し、裕福な階級をクラシス(classis)といい、そこに由来するらしい。
そんなことは、坂本氏も話さなかったが、こうして音楽を聴く機会に触れ、いろいろと湧いてきた疑問を自分なりに調べてみると、今まで知ろうとさえしなかったことが明らかになり、それもまた楽しい。
「日本文化はオーケストラに影響を及ぼしたか?」「そもそも何人からオーケストラと呼ぶか?」など、ユニークな質問が寄せられ、二人の相変わらずの楽しそうな会話の中で答えていく。
「文献では残念ながら、日本文化の影響はないですけど、ドビュッシーなんかは浮世絵が好きだったみたいですよね。波しぶきのイメージとかね」「YMOは三人で、オーケストラでしたから・・・」等々。
ラストは、本公演が初演奏となった、坂本氏が音楽を担当した映画「ファム・ファタール」が演奏され、圧巻はラストの、アカデミー賞音楽賞を受賞し、世界の坂本と知らしめた名曲「ラストエンペラー」。
結局、どのように楽しむとか、こう聴くべきとか、そんな肩に力の入ったコンサートではなく、市民のオーケストラのタイトルにふさわしい、勉強しつつクラッシックに触れ、オーケストラの面白さを存分に味わえた3時間だった。
ポビュラーともロック音楽とも違う、音色という表現がぴったりな色彩のある音たちの至福の時間を堪能して、ちょっとクセになるかも・・・と思った。