剣山〜星と花の贅沢登山〜その2

山の22時は、普段はそう起きているものではない。
この日も、朝5時前に起きて、運転・登山とフル活動の末、ここ剣山の頂上にいる私たち。
いつもだったらとっくに本日の疲れを取るべく、翌日の英気を養うべく寝ているのだけど、今回の登山は、星の観察がメインなので、こうして23時近くなっても、夏だと言うのに、フリースにヤッケを着こんで、天の川の神秘に触れ、流れ星の奇跡にうっとりし、夜空を見続ける。
先生の説明にも熱がはいる。
琴座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ、これが夏の大三角形という星座で、その真ん中にまさに天の川が横たわっている。
七夕伝説で有名なおりひめ(ベガ)ひこぼし(アルタイル)。
とりわけ、ベガは明るい恒星で、青白い光を放っている。
時間がたつにつれ、夏の星座から秋・冬と回って見えるようになる。
ずっとこの場にいたら、ゆっくりと四季の星座を体験できる巨大なプラネタリウムにいるのと同じだ。
先生たちは寝袋持参で、番号だけしか持たない星を見つけたり、いつか自分の名前がつくかもしれない未確認の星探しに集中している。

そんな合間に先生に聞いて、うしかい座のアルクトゥルス(3番目に明るい恒星)、おおいぬ座のシリウス(最も明るい恒星)、アンドロメダも確認。
そして最も見たかったプレアデス星団は冬の星座なので、夜中の2時過ぎごろから徐々に肉眼で見えるとのことなので、少し寝てからまた来ることにした。
が、目覚ましの失敗で、目が覚めたのが、5時過ぎで、外が白々と明けかけていた。
飛び起きて、外に出ると、満天の星たちは、消えて、ずっと見えていなかった月のすぐ上にビーナス!明けの明星(金星)、その真下にはジュピター(木星)が、一服の絵のようにあった。
星座には神話があり、それぞれの物語を知ると、なおさら興味深い。
そんな説明も聞きながら、夏の星空を明け方まで堪能した。
30分ほど待って、日の出を待つ。
山の上で見る日の出はいつも特別なものを感じる。
雲があったら、その雲に太陽の光が輝きを放ち、その瞬間で目に映る色が変化し、二度と同じ空を見ることがない。
太陽が起こす奇跡を、何度も体験しながら、最後に地球の生物の命の源である太陽の光をその熱さを五感で感じることになる。(もう少しこの場にいたなら、太陽の光が背後から差し込み、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱され、みる人の影の周りに、虹と似た光の輪となって現れるブロッケン現象の奇跡にも遭遇した)
6時前に支度を終えて、朝食を済ませて、剣山から見える縦走コースである次郎笈(じろうぎゅう)に出発する。
ここは、見通しの良い尾根歩きが続き、風通しも良く、人気の縦走コースだ。
笹の間に見えるツルギハナウド、ヒメフウロ、クルマバナ、オタカラコウなどが可憐に咲いていて、疲れた体に活力を与えてくれる。
今日のメインの花は、宮尾登美子の小説「天涯の花」で一躍剣山を有名にした「キレンゲショウマ」だ。
今まさに満開を迎えている群生を目指して、次郎笈から名水百選にも選ばれている御神水、大剣神社を経て、刀掛の松まで戻り、そこから一方通行の山歩きが始まった。
ここが結構な山道で、花の群生に出会うまで約40分の急登りをがんばらなくてはならない。
果たしてこんなところに群生が・・・と思いはじめた頃に、キレンゲショウマはひっそりと下向きに楚々と咲いていた。
花形は、百合に似ているが、もっと小さく肉厚で、色は優しい黄色。
優しくも、しっかりした茎を持ち、葉の色は濃い緑色で、そこには強い意志さえ感じられる。
なるほど、これが「天涯の花」と言われる所以だ。
一番の盛りだったため、一方通行の札があり、後戻りすることは出来ずに、不動の岩屋や胎内くぐりを経て、キレンゲショウマを堪能した。
寝不足と暑さと、結構な距離を歩いてきた疲労もあって、下りは西島駅からリフトに乗って下山。
リフトからより深く広く登ってきた山を見下ろすことが出来、これもまた至福の時。
二日間の登山を無事終え、星と花を堪能した剣山に別れを告げた。
案外近くて手軽に登れ、楽しみどころ満載の名山(日本百名山)であることに間違いはない。