常夜灯

30年来の友だちが、今、病と闘っている。
もう、3年になる。
彼女とはスポーツサークル活動で知り合い、しばらくしてから共通の趣味がわかり、サークル以外でも付き合いが出来た。
それが、「中島みゆき」。
最初のきっかけは「明日」というCMソングで有名な歌だった。
一緒に東京・渋谷の中島みゆき「夜会」(彼女独特の世界観のあるミュージカル)を、2年連続で観た。
その時、恵比寿から渋谷まで青山通りを一緒にブラブラと歩き、骨董好きの彼女は、西洋アンティークショップで記念にと、小さなスプーンを買った。
青山から渋谷へと街の様子が変わる頃、坂道に小さな看板を見つけ、飛び込みで入ったイタリアンレストラン「月の灯」。
湯むきして冷えたトマトが丸ごと出された前菜にびっくりして、あまりの美味しさにまたびっくりして、初めて食べたイカ墨のパスタで真黒になったお互いの口を見て大笑いした。
10月に出たばかりの中島みゆきの新譜「常夜灯」を一緒に聴きながら、そんな話をして笑う。
「みゆきはだんだんスピリチャルになるよね。前の真夜中の動物園より好きでしょ? こっちのほうが」
中島みゆきの歌でも、静かでゆったりして、バラードが特に気に入っている。


彼女は、明るく大人しい性格で、センスがいい。
一緒に誘われて習った写真も、もう10年近く続けていて、沢山の賞をとっている。
抒情的で、そこに物語があるかのような写真をとる。
私は彼女の写真が大好きで、時々家を訪ねては新作を見せてもらったり、展覧会で見て、ノートに感想を書いたりした。
「常夜灯」を聴きながら話す、想い出は次から次へと溢れ出す。
一緒にTVのクイズ番組にも出て、優勝して、そのご褒美に旅行券をもらって、それで山陰の高級温泉旅館に泊って、美味しい蟹を食べた。
カラオケに行く時は、昼から5、6時間なんてへっちゃらで歌いまくった。
中島みゆき特集で、ずっと二人で変わり番こに歌ったなぁ。
カラオケ大会で入賞した時も、「時代」を歌った。
あの時も、練習に付き合った。
アルバムの曲が次々と二人の空間に心地よく流れている。
きっと、このアルバムは好みだよね?

打ちのめされたら 打ちひしがれたら 値打はそこ止まりだろうか
踏み倒されたら 踏みにじられたら 答えはそこ止まりだろうか
光へ飛び去る翼の羽音を 地べたで聞きながら 
望みの糸は切れても 救いの糸は切れない
泣き慣れた者は強かろう 敗者復活戦
あざ哂え英雄よ 哂うな傷ある者よ
傷から芽を出せ 倒木の復活戦
(倒木の敗者復活戦)

つらいことをつらいと言わず イヤなことをイヤとは言わず
呑み込んで隠して押さえ込んで 黙って泣く人へ
ええかんげんにせえよ たいがいにせえよ
あけっぴろげだったお前は 何処へ消えた
ええかげんにせえよ たいがいにせえよ
目一杯だったお前が 気にかかる
言いたいことを言えば傷つく 大切な総てが傷つく
だから黙る だから耐える それを誰もが知らない
ならば
言葉に出せない思いのために お前に渡そう風の笛
言葉に出せない思いの代わりに ささやかに吹け風の笛
(風の笛)

常夜灯は、一晩中灯りを灯して見守ってくれる。
励ますことも、慰めることも出来ないけど、せめてこうして見守りたい。