春、文化の日

穏やかな日曜日、午前中に頼まれた用事を済ませて、のんびりと過ごしていたら、友人から電話で、コンサートのお誘いがあった。
「関西学院グリークラブ三原演奏会」場所は、今や三原の文化の発信地であるポポロ。
1時半に待ち合わせをして、乗り合わせて会場へ到着。
すでに開場されていたので、駐車場もほぼ満杯だ。
「あらら、席あるかしら?」そんな心配は無用!
何故か三原市民は奥ゆかしいのか、前のほうに空席が目立つ。
それではと、前から3列目のど真ん中に座り、開演を待つ。
白いブレザーに黒いスラックス、緑のネクタイの初々しい青年たちが、きびきびと舞台に登場し、指定のポジションにつく。


70名の男子学生によるメンタルハーモニー。
まずは日本名歌集(ノスタルジアより)
花・赤とんぼ・箱根八里・みかんの花咲く丘・ペチカ
抒情豊かに、表情豊かに、優しく力強い歌声が春の三原に響き渡る。
眉毛が動いたり、表情がコロコロ変わったり、ブレザーの端っこをつまんだり、それぞれの特徴ある歌い方を観ているだけでも十分楽しめてしまう。
誰もが知っている歌を、新鮮な耳触りで感じると、私の心も弾んでいくのがわかる。
1部が済んで大きな拍手が響き渡る。
賛助出演のルンビニ・コールと三原市民合唱団も、振付や選曲に凝って楽しいステージを見せてくれた。
20分間の休憩の後、本日のメインである(私はそう思ったのです)
男声合唱組曲「草野心平の詩」
石家荘にて・天・金魚・雨・さくら散る
初体験の圧巻のステージ。

茫茫(ぼうぼう)の平野くだりて サガレンの潮香かぎし女 月蛾の街にはいり来たれり(石家荘にて)
出臍(でべそ)のような 五センチの富士 海はどこまでもの青ブリキ(天)
あおみどろのなかで 大琉金(りゅうきん)はしずかにゆらめく とおい地平の支那火事のように 支那火事が消えるように 深いあおみどろのなかに沈んでゆく(金魚)
志戸平温泉第五号の番傘に 音をたてる 何千メートルの天の奥から 並んでくる雨が 地上すれすれの番傘に音をたてる 林檎畑にはさまれた道に そうして堕ちて沁みる(雨)
はながちる はながちる ちるちるおちるまいおちる おちるまいおちる 光と影がいりまじり 雪よりも 死よりもしずかにまいおちる(さくら散る)

草野心平の世界観がメロディに乗せられて、時には静かに、力強く、ユーモラスに、難解に描かれる。
鳥肌が立った。
蛙の詩人のイメージしかなかった草野心平にまで興味は及ぶ。
最後に関西学院グリークラブのOBで現在カルテット・ソリストでも活躍されている広瀬氏の指揮による、スピリチャル・イン・バーバーショップ・ハーモニーの楽曲も、体が自然に動いてしまうくらい楽しかった。
曲の初めに短い解説があり、歯切れのよい口調・タクトの軽やかさ、メンバー全てとの呼吸の一体感が心地よい。
鳴りやまない拍手、スタンディングオベーションの出来ない自分が歯がゆいくらい、感動したステージだった。
三原市民も、それが出来たら、文化的市民と胸を張れるに違いない。
名残惜しい会場を後にして、出口に向かうと、歌声が今度はロビーに響いていた。
その若さは、規定時間内では物足りないのか、サービス精神なのか、「カモメの水兵さん」を含め、数曲のミニコンサートが追加で行われていた。
歌はいい!
知らない世界を知ることはいい!
一人で知るより、沢山の人とそれを共有できることはもっといい!
そう、感じた春のひとときでした。