涙の話

 

小さい頃、私はあまり泣いた記憶がない。

悲しいめに会ったことがなかったのか、単に気が強かったのかを覚えていないけど、とにかく泣かない子だった。

私は大人になるにつれて、泣く機会が増えたと思う。

そして、悲しいよりもほかの事で流れる涙を体験するようになった。

 

涙は目の涙腺から分泌される体液のことで、眼球の保護が主要な役割らしい。

人間の流す涙は3種類に分類される。

1.   連続性の涙…常に眼の表面をうるおしている涙

2. 刺激による涙…タマネギなどの刺激にもとづいて流れる涙
3. エモーショナル・ティアー…深い感動や悲しみ、怒りなど情動の高ぶりによって流れる心因性の涙

1の涙は、バイクに乗っていた頃よく経験した涙で、ドライアイを防いでくれる貴重な目薬のようなものだった。

2の涙は、一説によると、体の水分の多い人がよくなる現象らしく、水ぶくれの私はタマネギを切ると、なにがそんなに悲しいのかと思うほど涙が止まらなくなるので、身をもって体験している。

 

涙にはいろいろな役割があって、目の表面(角膜・結膜)への栄養補給・まぶたを円滑に動かす潤滑材・細菌・紫外線から目を守る防御壁・雑菌の消毒になる。

 

涙の成分はプロラクチン哺乳類の乳の出を促す脳下垂体ホルモンで、涙の分泌と涙腺の発達を促すことも発見されている。成人女性は成人男性より50〜60%高い血清プロラクチンを持っており、これが女性のほうが泣きやすいという事実と係わりがあるとされている)

ACTH(ストレスの指標となる脳下垂体ホルモン。ストレスに反応して副腎皮質を刺戟し、ストレスへの抵抗力を強化するコルチゾールなどステロイドホルモンの分泌を促す。テレビの健康番組などでよく言われるストレス物質とはこのコルチゾールのこと。コルチゾール値が上昇すると免疫細胞の生成が阻害されるという)

ロイシンーエンケファリン(苦痛を軽減する脳内化学物質のエンドルフィンの一種。ストレスによって生じた免疫系の変化や気分、不安、発作などに対する神経反応をやわらげる)

そして、3の涙。

感情が高ぶったときに涙は流れる。

嬉しいとき、大笑いしたとき、感動したとき、悲しいとき、痛いとき、悔しいとき・・・。

今まで生きてきた経験が、いろんな種類の涙を流すことに繋がっている。

悲しい涙の経験は、大好きな人との別れだった。

父や友だちの死に直面したとき、止まることがないと思うくらいの涙を出した。

目からだけで足りない涙は、鼻からも出てくるし(鼻水)喉からもでてくる(嗚咽)。

やがて、涙の量にも限界があることを知る。

自分の中の悲しみが浄化され、和らぎ、落ち着きを取り戻した時にやってくる。

大笑いしたときの涙は、過ぎてしまうとわかる爽快感と虚脱感を味わうことができる。

笑い上戸の私はたびたび流す涙だ。

 

嬉し涙の経験は、実はあまりない。

ほとんどがやり遂げた達成感によるもので、一生のうちにそう何回も流すことは出来ないかもしれない。

それを自分以外の人の中に見つけて泣くことは多々あるけれど・・・。

感動の涙は、さまざまな種類がある。

涙をいろいろと分類するならば、この「感動の涙」がもっとも細かくさらに分類される涙だと思う。

映画を観ては泣き、本を読んでは涙する。

音楽を聴きながら、その詩の意味に泣き、それを聴いていた頃を思い出して泣く。

目頭が急に熱くなって、鼻がつーんとしてきて、じわじわと溜まり、ほろっと零れる。

隠しきれない何かが溢れる瞬間だ。

それに気づいたときは、むしろ幸福感に近いものを感じる。

流す涙の種類が多ければ多いほど、自分を好きになれる。

不思議な涙が零れる。

それを自分が丁寧に生きている証として、仲良くしようと思う。