私の漫画道


小学生のころの仲よしのお父さんが幸せなことに凸版印刷に勤めていて、学校の帰りにはよく、その子の家に遊びに行って漫画を見ていた。
特にお気に入りは「島っ子」ちばてつやで、思えばこれが私の漫画好きのきっかけになった。
「アリンコの歌」「みそっかす」とちばてつやのお気に入り作品が続く。
彼の作品に描かれる、オテンバで頑張りやでユーモラスな女の子が大好きだった。
小学校高学年になると兄が読んでいた少年マガジンも「あしたのジョー」目当てに読み始める。
やはり、ちばてつやだ。
ちばてつやファンは、この先も「おれは鉄兵」「のたり松太郎」と大人になっても続く。
普通の漫画好きだときっと手塚治虫から入るのだろうけど、私にとって「鉄腕アトム」はアニメーションで、漫画はちばてつやだった。
手塚先生の偉大さがわかるのはこの先何十年も経った後のことだったから・・・。

少女漫画で言うと、里中満知子や、水野英子の作品も好きで、中でも「ファイヤー!」(1970年第15回小学館漫画賞)水野英子は、今読んでもわくわくする。
繊細でストイックな主人公アロンに、まだ恋なんて知らない頃の私は淡い憧れを抱いた。

中学・高校時代は漫画より小説に夢中になり、竹宮恵子の衝撃的作品「風と木の詩」に出会うまでは、実はあまり読んでいない。
この作品は少女漫画史においても分岐となる作品で、同性愛や虐待問題を直接的に描いている衝撃的な漫画で、当時もう大人だった私は「本当にこれを子供が読むのだろうか?」とびっくりたまげた記憶がある。
まさに漫画ならではの禁断の領域初体験となる作品だ。

就職先が、ラッキーなことに雑誌読み放題の職場だったので、その頃に吉田まゆみに出会い、彼女の作品を全作品を読破する。
中でも、お気に入りは「アイドルを探せ」。
センスのある丁寧な絵や、流行りものをさりげなく物語に盛り込むユーモアは天下一品で、タイトルの付け方も当時のヒットソングのパロディだったりして、お笑いのセンスも抜群だった。

それから惣領冬実や吉田秋生と続く。
ここらへんになると、ひとつの作品が気に入ると、さかのぼって読むという「大人読み」をし始めて、好きな漫画家限定の漫画道にまっしぐらだ。
なぜか飽きることなく、この作業は今だに続いており、その数がだんだん増えてうれしい悲鳴だ。(が、古い人が多いためめったに新作が出ない)
吉田秋生の大傑作「BANANA FISH」は今までの読んだ漫画のベストスリーに入るお気に入りだ。

そういえば、一時期は、柴門ふみと弘兼憲史夫婦の作品しか読まない時期もあった。
「あすなろ白書」「課長島耕作」等など、ほとんどの作品を網羅しており、我が家の本棚の大部分をこの夫婦の作品が占めている。
彼らの作品は、漫画の世界から一歩先に進んでいる、絵のついた小説を読んでいる錯覚さえする。

あだち充や佐々木倫子やあげればきりのないくらい好きな作家や好きな作品があり、時々引っ張り出しては読んだりしている。
こうして、遡ってみても、私の漫画道は決してマニアックなものではなくて、なんとなく王道を行っている感じがする。

漫画は、小説よりも身近に別の世界を見せてくれる。
そして、そのスピードがとにかく早い。
いつ読んでも、何回読んでも、その時々でいつも楽しませてくれる漫画たち。
そろそろ漫画も卒業かな…と思っている頃に決まって気になる作家が現れたりして、ずっと私の漫画道は続いてきた。

最近「よしながふみ」にはまっている。
今まで好きだった作家たちプラスアルファがあるのが彼女の作品だ。
すべての作品ではないが、料理のレシピが載っていたり実生活にも役立つテイストが入っている。
これも時代なのか、私がそういうものを求め出したのか、それは謎だがここ2週間でずいぶんな量を読んでいる。
くしくも彼女は、各界から今世紀最後の漫画家とも言われている。
ヒットする面白い漫画がこの先出ることがあっても、名を残す事のできる漫画家は、もう出ないという意味なのだろう。

で、しばらくは未読本もあるのでよしながふみが楽しい漫画道をいろんな風景で楽しませてくれるだろう。