その時は来た

20歳になって初めての選挙権を得てから随分と経ったもんだ。
雨の日も風の日も投票場に足を運び、日本国民としての義務を黙々と果たしてきた。
不在者投票も何度か経験した。
嵐の中、やっと見つけた初めて行く投票場の帰り道、ぬかるんだ道の端っこを歩いていたのに、トラックに思いっきり泥水をかけられ、走り去った後姿に向かって「ばっかやろー!」と叫んだこともあった。
何の選挙かは覚えていないのに、この光景だけは強烈に焼き付いている。

「選挙だけは、自分の意思を貫き通せるのよ」とバリバリの保守の父に対抗して、左よりの母がにやりと笑って話してくれた。
これは、母の秘密でもあるらしい。
私は、と言えば、やはり誰の仕切りやお願いに屈することもなく、自分の意思で選択してきた。
それでも、政治に参加しているという実感は持てなかった。
「結局何も変わらない。それでも義務は果たさないとねぇ。」
そして、2009年8月30日の衆議院選挙。
その時がきた。
その時は拍子抜けするほどあっさりと来て、自民党は歴史的な大敗をし、「政権交代!」と訴え続けた民主党が念願の政権を手にする結果になった。
私はわくわくしている。
変わるか変わらないかはわからない。
マニフェストがきちんと実行されれば、あらゆる変化が周りで起こるだろう。
結果がどうあれ、「変化」を求めたのは多くの有権者だったということだ。
2009年は世界に目を向けても「変化」の年になった。
アメリカでは「change」(変革)「yes,we can.」(やればできる)のキャッチフレーズでバラク・オバマが黒人初の大統領となった。
彼の大統領就任演説は、世界中に感動を与えた。
以下はその抜粋だが、そのまま鳩山さんが米国を日本と変えて話しても違和感がない。

 「われわれはきょう、恐怖ではなく希望を、紛争や不和ではなく、目的の一致を選んだがゆえに、ここに集まった。きょう、米国政治を締め付けてきたささいな不平と誤った約束、批判とすり切れた教義に終わりを告げるためにやってきた。」
「どこを見渡しても、やらなければならない仕事がある。米国経済は大胆で迅速な行動を求めている。われわれは雇用創出だけでなく、成長の新たな基盤を築くために行動する。商業に力を注ぎ、われわれ同士を結びつける道路や橋、配電盤、デジタル回線を構築する。われわれは科学を正しい場所に戻す。医療の質を向上し、コストを削減するために、驚嘆すべき技術を巧みに使う。太陽光と風力を車の燃料に、工場を稼働するために活用する。新時代に合うよう学校や大学を変革する。これらすべてをわれわれはできるし、やっていく。」
「われわれが今日問うべきなのは政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、政府が機能するか否かだ。まともな賃金で、支払い可能な医療保険と、尊厳ある退職後の生活を送れる仕事を国民が見つけられるよう助けられるかどうかだ。答えがイエスなら、われわれは前に進む。答えがノーなら計画は終わる。」

これをあらためて読んで、私は期待でわくわくする。
鳩山さんの所信表明演説がこれまで生きてきて一番楽しみにしている演説になっている。
こんな人がきっと日本中にたくさんいるに違いないので、相当なプレッシャーだろうけど、彼は宇宙人と言われているくらいなので、「変わる」ということについての具体的な期待感が伝わってくるような演説、後世に残るような演説を待っている。
先日あるテレビ番組で、インタビュアーが「御主人は宇宙人と言われていますが、どう思われますか?」という質問に対して、
「あら、あなたも私も、みんな宇宙人ですよ」とにこやかに言ってのけた、幸(みゆき)夫人の言動も楽しみでならない。
こんな不景気で、明るい話題がほとんどないどん底の日本が、どう変わっていくのか。
その方向が見えてきたら、その中で私が出来ることを選挙以外でちゃんと探してみようか。